終了済み講義
マックス・ヴェーバー(1864-1920年)は、社会学第二世代の中心人物として有名です。実際、ヴェーバーはえらい人気です(嫉妬するくらい)。ドイツ同世代のテンニェスやジンメルと比べると、扱われ方がまったく違います(一時期、ヴェーバーという人物は国内で神格化されていました)。その証拠に、今でもヴェーバーの入門書は新書でいくつも出版されています。特に、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(1904-1905年)や、講演「職業としての学問」(1917年)講演「職業としての政治」(1919年)なんかは聞いたことがあるとか、かじったことがある、という方も多いのではないでしょうか。確かに、これらの本はなかなか面白い。政治家なんかもよくヴェーバーを引用しますよね。
でも、はっきり言いますが、これらを読んだだけでヴェーバー社会学を理解したと思うのはまったくもってモッタイナイ!!
遺稿集として死後出版された『経済と社会』(1922年)は、ヴェーバー社会学の宝庫であり、実は重要論文が多く収められています。その一つ、しかも一番初めに収められたのが『社会学の根本概念』です。晩年のヴェーバーが自身の社会学の根本概念を明らかにしようとしたのがこの書です。したがって、この書を通じて、ヴェーバーの「理解社会学」の基礎を理解することができるのです。むしろ、この本を読まないとヴェーバー社会学そのものは理解できないでしょう。
現代の(ちょこまかした)社会学と比べると、ヴェーバーの時代の社会学は実証よりも理論ベースです。私見では、初期の社会学者で哲学の影響から免れている人はいませんから、まさに哲学チックでさえあるヴェーバーの社会学を味わっていただきたいと思います。この書で学べる諸概念は、汎用性があり、現代でも世の中を分析するのに使えるものばかりです。
例えば、みなさんは個人と社会のどちらが他方を決定していると思いますか?『社会学の根本概念』にあるように、ヴェーバーは、デュルケームとは対照的に、個人の行為、そしてその動機を理解しなければならないと考えました。これを方法論的個人主義と言います。個人を超越した「社会的事実」の存在を信じ、方法論的集団主義を採用するデュルケームとは真逆です。
本講義では、「価値自由」や「理念型」というヴェーバー社会学を特徴づけるアイデアも併せて紹介していきます。これらの概念は、ヴェーバー社会学を学ぶ上で大事なもう一つの論文、『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』(1904年)において論じられているので、この書も紹介します。知っているようで知らないヴェーバー社会学の「いろは」を勉強していきましょう。さらに、この機会にコント、デュルケーム、テンニェス、ジンメルといった初期の社会学者の理論も小出しにしていきます。なので、本講義は「古典社会学」への入門講義としてもうってつけだと思います。本書はさほど難しくないので、本講義をきっかけにしていただいて、みんなでゆっくり読み進めましょう。
※『社会学の根本概念』(清水幾太郎(訳) 、岩波文庫、1972年、550円!!)をご用意ください。
第1回講義:2024年03月09日(土):20:00 - 21:30
イントロダクションの回です。社会学の歴史、哲学と社会学の関係、ヴェーバーの人生などを簡単に紹介します。私がなぜ社会学に興味を持ち始めたか、といった話もグダグダしていきましょう。気軽に受講してください。
第2回講義:2024年03月16日(土):20:00 - 21:30
「第一節 社会学と社会的行為」を解説します。この箇所が一番大事です。まさにヴェーバー社会学の根本概念を説明してくれています。実はこの箇所だけでも、彼の理解社会学の基礎を理解することができるでしょう。ヴェーバーが「社会的行為」にどうやってアプローチしていくのか。この箇所で提示される基礎概念に基づいて以降の議論が続きます。見ものですよ。
第3回講義:2024年03月23日(土):20:00 - 21:30
第二節から第七節を解説します。この箇所でまずヴェーバーは社会的行為を分類して見せます。次に社会的関係について分析を加え、社会的行為に規則性を与えるものとしての「習慣」あるいは「慣習」を扱います。次に、社会的行為、あるいは社会的関係を支えるものとしての「正当なる秩序」が論じられます。「慣例」と「法」といった社会秩序はいかにして正当であると言えるのでしょうか。
第4回講義:2024年03月30日(土):20:00 - 21:30
第八節から第十七節を解説します。この回では様々なテーマを取り扱いますが、最も面白いのは「第九節 共同社会関係と利益社会関係」でしょう。これはもちろん、ヴェーバーのちょっと先輩にあたるテンニェスの『共同社会と利益社会』(1887年)から得た概念です。この社会の区分は、姿を少し変えつつも、ヴェーバー以降も受け継がれていきます。また、ヴェーバーは支配論でも有名ですから、「第十六章 権力と支配」も見どころです。別の著作『権力と支配』『支配について』と併せて紹介しましょう。
哲学(学問)は面白い!!!!私が胸を張って言いたいのはこれです。他方で、哲学は難しいし、意味がないと思われる方は少なくありません。確かに私もいつもこのように自問自答しています。ここでさしあたりこの「疑惑」に私なりに答えるならば、次のようになります。「簡単な学問なんか要らない。そもそも簡単な学問なんてありえないし、さらに簡単さはやりがいを削いでしまう。また、確かに哲学は利益を生み出すことはないが、そもそも目に見えて役立つような哲学は要らない。哲学はなにより、面白いという意味がある!!」この哲学の面白さを伝えたくてたまらない!!ぜひ講義でお会いしましょう!!