開講中の講義

実践理性批判

『実践理性批判』

イマヌエル・カント 著

24年5月21日(火)以降 常時視聴可能

毎週火曜日 講義動画更新

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講師: 髙木 裕貴

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終了後2年視聴可能

全8回講義

講義+読書グループ:13200円
7月23日まで登録可

講義のみ:12000円
参加登録受付中

読書グループ開講期間:24年5月21日(火) ~ 2024年9月10日(火)

利用規約
講義概要

我々は日常的に、様々な道徳に囲まれて生きています。「嘘はつかない」とか、「ゴミは朝決まった場所に出す」とか。でも、そんな道徳って、ホンマにあるんでしょうか?道徳なんか、妄想じゃないでしょうか?他方で、もし道徳があるとしても、我々の人間の意志って所詮機械みたいなもんで、道徳に従うかどうかを自分で決めることなんかできないんじゃないでしょうか?もしかしたら、人間の意志も行動も、あらかじめ物理的に決められているのかもしれません。人間の意志は自由ではないわけです。そうしたら、そんな人間について道徳を云々しても意味なくないですか?

このような問いに真正面から向き合い、「道徳も自由もある!」と答えた哲学者と言えば、イマヌエル・カント(1724-1804)です。カントの主著、『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』は「三代批判書」と呼ばれていますが、その中でもまさに道徳を扱う『実践理性批判』(1788年)において、カントは自由と道徳(法則)の存在を問いました。

『実践理性批判』は哲学の中でも道徳哲学、もしくは倫理学に関する著作です。倫理学とは、行為の正不正、または善悪を扱う部門であると言えます。例えば、「他人の嘘をつくことはつねに不正なのか。それともその嘘によって人が幸せになるのであればその嘘は正しいのか」などの問いを扱います。

しかし、『実践理性批判』のカントは、このような個々の倫理にさほど関心を払っていません。むしろ、倫理を成立させる根拠にまでさかのぼります。つまり、それは人間の理性、そして道徳法則と自由の可否を問うことになるのです。本書のテーマは「道徳法則と自由」と言うことができるでしょう。
 
カントの著作は(時には哲学者にとってすら)難解であることはよく知られています。カントのもう一つの倫理学書である『道徳形而上学の基礎づけ』(1785年)を読んだことがある方が少なからずいらっしゃるでしょうし、『基礎づけ』に関する私の講義を受講された方もいらっしゃるでしょう。実は、『実践理性批判』は『基礎づけ』よりも形而上学的で、理論的で、つまりは抽象的で難解です。おそらく、一人だけで読み進めることはかなり難しいでしょう。

だからこそ、ついに私が『実践理性批判』の講義を実施することになりました。『実践理性批判』の講義は長くなるので今まで断ってきましたが、オンデマンド型の導入により、実現しました。今回は、ぜいたくにも八回の講義を通じて『実践理性批判』をわかりやすく解説していきます。「純粋理性」「理性批判」そして「自由」というカント形而上学の核となる概念をしっかりと掴んでいきましょう。

長丁場にはなりますが、この機会に、カントの王道、『実践理性批判』をねちねちと一緒に読み進めてみませんか。頑張ってついてきてください!!

 

  • テキストとしては、『実践理性批判』(波多野精一・宮本和吉・篠田英雄訳、岩波文庫)をご用意ください。他の翻訳書でも結構ですが、訳語や頁数が異なることはご承知おきください

  • 「序」は読まずに、「緒論 実践理性批判の構想について」から読み始め、第一部の第一篇を読みます。41頁から218頁までです。

  • 第4回講義と第5回講義の間に一週間ではなく二週間設けることで、学習の遅れを取り戻し、休憩し、あるいは復習・予習していただく時間とします。この時期にオンライン懇親会を行うかもしれません。

  • また、講義の進度によっては講義回数を増やす可能性があります。

 

各講義の概要

第1回講義:2024年05月21日(火):オンデマンド講義

カントのごく簡単な経歴とともに、哲学史・倫理学史におけるカントの位置づけを紹介します。次に、哲学史・倫理学史における『実践理性批判』の位置づけとその重要性や影響を解説します。これに加えて、『実践理性批判』を読み解くヒントやキータームを共有したいと思っています。カントは独特の言葉遣いをするので、注意が必要です。次回以降のために十分な準備をしておきましょう。

第2回講義:2024年05月28日(火):オンデマンド講義

「緒論 純粋実践理性の構想について」と「第一節」を読みます。「緒論」は非常に重要です。『実践理性批判』の目標が明確に宣言されているからです。特に『純粋理性批判』や『基礎づけ』との関係に注目しつつ、カントの頭の中を多少なりとも理解しておきましょう。理論と実践、理性や純粋理性という区別もさっそく登場します。「第一節 定義」では、「原則」「格率」「法則」といった基礎概念が登場します。この回もやはり重要な準備運動となるでしょう。




 

第3回講義:2024年06月04日(火):オンデマンド講義

「第二節」から「第六節」を読みます。本箇所では、まず「道徳とは何でないか」、そして「道徳は何であるか」が論じられます。カントは、道徳と幸福とは一切関係ない!!とする立場を支持します。他方で、道徳とは普遍的なものでなければなりません。ここでは自由に関するカント独特の立場が重要になってきます。カントによれば、幸福を追求するだけの意志は、たとえそれがどれだけ合理的であったとしても、自由ではありません。では、どのような意志であれば自由であると言えるのでしょうか。




 

第4回講義:2024年06月11日(火):オンデマンド講義

「第七節」と「第八節」を読みます。本箇所は本書で最も中心的な箇所でしょう。肝心の「根本法則」が提示されるのですから。カントは、本当の道徳は意志の他律ではなく、自律に存すると考えます。ここでの自律とは、非常にカント独特の意味を持っています。誤解のないようにしっかりと理解していきましょう。
  

~1週間の休憩~

 

第5回講義:2024年06月25日(火):オンデマンド講義

「一 純粋実践理性の原則の演繹について」を読みます。この箇所は、それまでに提示された純粋実践理性の原則、すなわち、道徳的原則の演繹、言い換えれば証明に着手します。この箇所はカント研究における大きな「問題」あるいは「謎」です。実はこの箇所では『基礎づけ』とは異なるセオリーが提出されているのです。この意味では、見どころでもありますね。



 

第6回講義:2024年07月02日(火):オンデマンド講義

「二 純粋理性がその思弁的使用においてはそれ自体不可能であるような拡張を、その実践的使用においては為し得る権能について」を読みます。この箇所はちょっとマニアックとも思うのですが、あえて読んでみましょう。この箇所を理解するには、やはり、カント哲学における思弁と実践の関係を思い出す必要があります。『実践理性批判』にとどまらず、カント哲学全体の壮大さ(?)を感じていただければと思います。




 

第7回講義:2024年07月09日(火):オンデマンド講義

「第二章 純粋実践理性の対象の概念について」を読みます(「純粋な実践的判断力の範型論について」は読まない可能性があります)。この箇所は、端的に言えば、道徳の対象、すなわち善と悪の概念を扱います。カントは、善悪があって法則があるのではなく、法則があるから善悪がある、と主張し、これを「方法の逆説」と呼んでいます。




 

第8回講義:2024年07月16日(火):オンデマンド講義

「第三章 純粋実践理性の動機について」を読みます(「純粋実践理性の分析論の批判的解明」は読まない可能性があります)。この箇所は、道徳に従う動機を扱います。ここまで読んできたみなさんは、カントの倫理学はごりごりの理性主義であることに気づかれるのですが、そんなカントはどのような道徳的動機を認めるのでしょうか。




 

質疑応答の方法

質問はいつでもDiscordに書き込み可能です。毎週月曜日に質問を確認し、discord上で回答します。
 

講師からのメッセージ

哲学は面白い!!!!私が胸を張って言いたいのはこれです。他方で、哲学は難しいし、意味がないと思われる方は少なくありません。確かに私もいつもこのように自問自答しています。ここでさしあたりこの「疑惑」に私なりに答えるならば、次のようになります。「簡単な学問なんか要らない。そもそも簡単な学問なんてありえないし、さらに簡単さはやりがいを削いでしまう。また、確かに哲学は利益を生み出すことはないが、そもそも目に見えて役立つような哲学は要らない。哲学はなにより、面白いという意味がある!!」この哲学の面白さを伝えたくてたまらない!!ぜひ講義でお会いしましょう!!

参加にあたってのご案内事項
  1. 本講義はオンデマンド型講義となります。参加登録者はいつでも講義動画・講義資料をご覧いただくことができます
  2. 開講後一定期間は、期間限定で読書グループを開講いたします。
  3. 開講時にすべての講義動画がアップロードされていない場合もございます。その場合は、毎週ないし隔週の頻度で定期的に講義動画を順次アップロードされます。
  4. 本講義の読書グループの開講期間は2024年09月10日までとなります。以降は、講義動画は引き続きいつでもご覧いただけますが、Discordでの質疑応答や問いかけへの回答を通じたやり取りは公式には終了となります。
  5. オンデマンド型講義では、ライブ講義よりも読書グループの開講期間が長く設定されています。そのため、これまでよりもじっくりと読み、考え、質問することができます。
  6. ご質問は、各講義の講師お一人で対応されるものであり、参加者の皆さまからの質問が多くなった場合、すべての質問に迅速に応えられない場合がございます。予めご了承ください
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