開講中の講義

プラグマティズム

『プラグマティズム』

W.ジェイムズ 著

24年1月30日(火)以降 常時視聴可能

毎週火曜日 講義動画更新

大厩諒

講師: 大厩諒 (中央大学)

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終了後2年視聴可能

全5回講義

講義+読書グループ:7700円
参加登録受付終了

講義のみ:7000円
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講義概要

この講義では、ウィリアム・ジェイムズ(1842-1910)の『プラグマティズム』を読んでいきます。ジェイムズは、19世紀後半から20世紀初頭に活躍した米国の哲学者、心理学者で、『プラグマティズム』は彼の主著のひとつに数えられます。

彼が生きた時代の米国は大きな変化のなかにありました。たとえば、西部開拓の進展や北部と南部の対立の深まり、それによって引き起こされた南北戦争、その後の飛躍的な経済成長(「金ぴか時代」)、産業化と都市化の急加速などです。さらに、小規模のカレッジに代わって近代的な大学(university)が勃興し、専門学会や学術雑誌が登場するなど、現代の学問・研究のあり方に通じるような変化が生じていました。

のちに「プラグマティズム」と呼ばれることになる思想運動は、こうした状況のなかで生まれました。ジェイムズはその生みの親の一人であり、彼の活躍もあってプラグマティズムは世界的に認知されるようになりました。

現代でも、プラグマティズムはC・ミサックやR・ブランダムといった哲学者によって牽引され、大きな潮流となっています。また、人文・社会科学全体でも再び脚光を浴びており、たとえば政治哲学においては、近代政治思想の人間観を乗り越え、民主主義のバージョンア ップを図るものとして注目されています。

この講義では、そんなプラグマティズムの源流に立ち返り、ジェイムズの『プラグマティズム』を読み解いていきたいと思います。その際、主に以下の二点に注目していきます。

1.プラグマティズムとは結局のところどのような立場なのか。

2.プラグマティズムは宗教とどのような関係を持つのか。

1について。プラグマティズムについてはこれまで多くの人が論じてきました。また、哲学の歴史を顧みれば、多くの人が「プラグマティスト」と呼ばれてきました。しかし、そこで言われている「プラグマティズム」とはそもそもどのような意味で使われているのでしょうか。この講義では、とかく曖昧になりがちなこの語の中心部を、源流に立ち戻ることで明らかにしたいと考えています。また、より一般的なレベルでは、プラグマティズムと言えば、役に立つことなら何をしてもよいとか、実利優先のアメリカ的な(浅薄な)考えだと見なされることも多いので、そうした誤解を解くことも同時におこなっていきます。

2について。プラグマティズムと宗教のつながりは、とりわけ現代の議論を見ているだけではイメージしづらいところがあります。しかし、ジェイムズがこの本を書いたとき、根本的なところで宗教の擁護という動機が働いていました。プラグマティズムは宗教とどのように結びついているのか。また、ジェイムズの支持する宗教とはどのようなものなのか。講義を通じて、この問いに明確な答えを与えたいと思います。

この講義をとおして、アメリカ哲学史の面白さと奥深さをお伝えしたいと考えています。みなさんのご参加を心よりお待ちしております。

※この講義で使用する『プラグマティズム』(桝田啓三郎訳、岩波文庫、1957年[2010年改版])は、旧版と改版で頁付けが異なります。講義では、改版の頁数で指示をおこないます。

※※この講義は、2023年9-10月におこなわれた同名のライブ講義をオンデマンド化したものです。

各講義の概要

第1回講義:2024年01月30日(火):オンデマンド講義

初回では、『プラグマティズム』を読む際の手助けとなる背景知識についてお話しします。ジェイムズの生涯や思想の全般的特徴、プラグマティズムという思想運動の成り立ち、『プラグマティズム』という本の概略などを講義します。

第2回講義:2024年02月06日(火):オンデマンド講義

実際に本文に入り、『プラグマティズム』第1・2講を読んでいきます。ジェイムズの哲学観や、哲学と「気質」の密接な関係、プラグマティズムの本来の意味などについて考えます。

第3回講義:2024年02月13日(火):オンデマンド講義

第3・4講を読みます。プラグマティズムという方法を実際の哲学的問題に適用した場合、どのように考えていけるのかを検討します。

第4回講義:2024年02月20日(火):オンデマンド講義

第5・6講を読みます(時間の都合上、講義では第6講の解説が中心になります)。ここでは、真理に関するプラグマティズムの考え方(真理とは役に立つことである)が論じられます。これは、この本のなかで最も読まれ、最も議論を読んだ箇所ですが、同時に、最も誤解されやすいところでもあります。『プラグマティズム』のほかの講や、ジェイムズの哲学全体を踏まえつつ、彼の真理論を検討したいと思います。

第5回講義:2024年02月27日(火):オンデマンド講義

第7・8講を読み、プラグマティズムと宗教の関係について考えます(講義では第8講を中心的に取り上げます)。宗教というトピックはジェイムズの哲学において最重要の位置を占めるものです。ほかの著作も参照しながら、ジェイムズの宗教論の特徴を解説し、それがプラグマティズムと密接に関係することを見ていきます。

質疑応答の方法

毎週火曜日と金曜日の午後に質問を確認し、discord上で回答します。質問内容によっては、回答までに多少時間をいただくことがあります。

講師からのメッセージ

はじめまして。大厩 諒(おおまや りょう)と申します。ウィリアム・ジェイムズの思想を中心に、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのアメリカ哲学の歴史を研究しています。

この時期のアメリカ哲学は、「プラグマティズムの時代」としてまとめられることもありますが、実際にはさまざまな立場が乱立した群雄割拠の状態で、プラグマティズムはそのうちのひとつにすぎませんでした。当時活躍した哲学者たちは、いまではほとんど忘れ去られた存在ですが、そんな人たちの思想を発掘するのが私の研究のメインテーマです。

哲学は、ほかでは得られない世界の見方を私たちに与えてくれます。これは、とても楽しく、興奮する営みです。しかし、哲学の楽しさを十分に味わうには、一定の準備が必要で、それが哲学史です。講義をとおして、哲学をより楽しむために、私自身も学んでいきたいと考えています。

参加にあたってのご案内事項
  1. 本講義はオンデマンド型講義となります。参加登録者はいつでも講義動画・講義資料をご覧いただくことができます
  2. 開講後一定期間は、期間限定で読書グループを開講いたします。
  3. 開講時にすべての講義動画がアップロードされていない場合もございます。その場合は、毎週ないし隔週の頻度で定期的に講義動画を順次アップロードされます。
  4. 本講義の読書グループの開講期間は2024年04月09日までとなります。以降は、講義動画は引き続きいつでもご覧いただけますが、Discordでの質疑応答や問いかけへの回答を通じたやり取りは公式には終了となります。
  5. オンデマンド型講義では、ライブ講義よりも読書グループの開講期間が長く設定されています。そのため、これまでよりもじっくりと読み、考え、質問することができます。
  6. ご質問は、各講義の講師お一人で対応されるものであり、参加者の皆さまからの質問が多くなった場合、すべての質問に迅速に応えられない場合がございます。予めご了承ください
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