終了済み講義

論理学

『論理学 考える技術の初歩』

コンディヤック 著

24年1月28日(日) ~ 24年2月25日(日)

毎週日曜日 20:00 - 21:30

三浦隼暉

講師: 三浦隼暉 (東京大学人文社会系研究科)

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視聴期限:2027年2月25日

全5回講義

参加料金:10000円

最少開講人数:15名

講義概要

今回扱うのは、「啓蒙の世紀」と呼ばれる18世紀、ロックやニュートンの経験論哲学を引き受けつつ、デカルトやスピノザ、マルブランシュ、さらにはライプニッツらが打ち立てた形而上学を批判的に再考しようとしたフランスの哲学者、エティエンヌ・ボノ・ド・コンディヤック(1714–1780)という人物です。ライプニッツの『モナドロジー』が執筆された年に生まれたコンディヤックは、本質や第一原理をめぐる17世紀的哲学ではなく、次の世代の新たな哲学を打ち立てることになりました。

のちにジャック・デリダが語ったように、コンディヤックは「本質と原因のメタフィジーク〔=形而上学〕の代わりに、現象と関係(「連関(liaison)」)の一つのメタフィジークを打ち立てること」を提案しました(デリダ『たわいなさの考古学』人文書院)。例えば、ライプニッツが見えるものの向こう側に「モナド」という隠された実在を覗き見ようとしたのに対して、コンディヤックは私たちに立ち現れる言語や現象、そしてそれらの組み合わせに着目したといえます。

今回は晩年のコンディヤックによる著作『論理学』(1780)を扱います。ただし「論理学」といっても三段論法や記号を操作するような論理学ではありません。副題に「考える技術の初歩」とあるように、本書には、よりよく物事を考えるために為すべきことが書かれています。たしかに18世紀の思考法全てが現代の私たちに役立つとは限りませんが、しかし最近の本にはない発見があるかもしれません。

コンディヤック自身が書いていることに従えば、この論理学を学ぶことで「諸学問について適切に論じている本を、遅くないスピードで読み進めることができる」ようになるそうです(『論理学』第2部第9章)。考える技術とは、物事を理解するための正しい道筋であり、そうした技術を身につけることで素早く理解できるようになるということなのでしょう。

本書は、ポーランドやフランスで教科書として出版されたものであり、とても読みやすく書かれています。これまで哲学書に触れたことがないという方も、それほど抵抗なく読み進めることができると思います。逆に慣れている人は、読みやすさのあまり大事な点を見落としてしまうかもしれません。そのような意味で、どのようなレベルであれ、皆さんと一緒に読み進めることはとても有意義な時間となると予想しています。

さまざまな背景をお持ちの皆さんのご参加をお待ちしております。

※講義中のテキストは講談社学術文庫のコンディヤック『論理学 考える技術の初歩』を使用します。

各講義の概要

第1回講義:2024年01月28日(日):20:00 - 21:30

コンディヤックの著作を読むための準備として、大陸合理論(デカルトやマルブランシュ、ライプニッツ)や、イギリス経験論(ロック)などの思想を概観します。その上で、コンディヤックの思想がどのような位置に置かれるのかを簡単に解説したいと思います。また『論理学』の最初に付された「この本の目的」なども読み進めます。

第2回講義:2024年02月04日(日):20:00 - 21:30

第1部第1章から第4章までを扱います。私たちがものを見て、その観念を獲得するというのはどのようなことなのかが扱われていきます。そのための方法として、本書のキーワードのひとつでもある「分析」という言葉が登場してきます。また、私たちはいかにして個々の事物を超えた、一般的で抽象的な観念を獲得するのでしょうか(例えば「この犬」ではなくて一般的な意味での「犬」など)。こうした観念の獲得などもここで議論されます。

第3回講義:2024年02月11日(日):20:00 - 21:30

第1部第5章から第9章までを扱います。感覚によって捉えられないものの観念がいかにして生じてくるのかを考察した上で、そうした働きをもつ心そのものの探求が行われます。また第9章では、私たちの記憶力と習慣の関係が論じられています。

第4回講義:2024年02月18日(日):20:00 - 21:30

第2部第1章から第5章までを扱います。ここから言語による推論がどのように行われるべきかが論じられていきます。そのさい、通常の言語だけでなく、その根底にある「行動の言語」というものが考察されることになります。身体構造と結びつけて論じられる行動の言語とは一体何者なのかをここでは確認していきましょう。

第5回講義:2024年02月25日(日):20:00 - 21:30

第2部第6章から第9章までを扱います。分析」という方法に対して、なぜ「総合」が誤りをもたらすのかが論じられていきます。「真の論理学は自然から学ぶべきものなのである」とコンディヤックが語るとき、どのようなことが考えられているのかを確認していきましょう。

講師からのメッセージ

こんにちは。東京大学大学院で哲学を研究している三浦隼暉(みうらじゅんき)です。これまで、多くの参加者の方々と一緒にデカルトやスピノザ、ライプニッツなど近世哲学の著作や、フーコーの生命思想史に関する著作などを扱ってまいりました。

しばしば「哲学研究って何をしているの?」と聞かれることがあります。研究の進め方は人によって様々ですが、私の場合、300–400年前のヨーロッパで書かれた文章を読みながら、その内容を、時代も文化も異なる現代の我々にも理解できるような仕方で提示し直すような研究をしています。

私が目指しているのは「哲学は留保なしに愉しい」と感じてもらえるような講義を作ることです。一緒に哲学書を紐解くことで、そのような愉しさを経験するお手伝いができればと考えています。最後に、私の恩師が残した言葉を送ります。「本は一人で読むものですが、ときには窓を開けて一緒に哲学をしましょう」。

参加にあたってのご案内事項
  1. 各講義は、録画のうえ参加者へ講義後半日後に共有いたしますので、一部講義にご参加が難しい場合もご参加をいただけます。
  2. 録画動画は、講義終了後もご覧いただけます。各講義の録画視聴期間は、本ページ上部に記載しています。
  3. 書籍は、参加者各自でご用意ください。
  4. 講義では、受講者の方に質問や受講者同士の対話を強要することはありません。講義中のご質問は、Zoomのチャットまたは音声で行うことができます。
  5. 参加申込期限は初回講義開講時間までとなります。
  6. 開講3日前20:00の時点で最小決行人数に達していなかった場合は、本講義を中止させていただくことがございます。その場合参加登録をされた皆様へご返金させていただきます。
  7. 開講1週間前に、参加者にはzoomとslackのURLをご共有いたします。それ以降は講義参加へのキャンセルはできませんので、ご了承願います。