終了済み講義

「いき」の構造

『「いき」の構造』

九鬼 周造 著

24年2月16日(金) ~ 24年3月15日(金)

毎週金曜日 20:00 - 21:30

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講師: 岡田 悠汰

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視聴期限:2027年3月15日

全5回講義

参加料金:8800円

最少開講人数:10名

講義概要

ドラマや映画の「いき」な演出、あるいは何気なく入ったお店での「いき」な計らい…私たちが日常生活で何気なく使っている言葉である「いき」。「いき」とは、江戸時代以来の日本の美意識とされていますが、生活様式が西洋化した現代においても、私たちは「いき」だと感じることがあります。

では「いき」とは、そもそもどういうことなのでしょうか?

このことを考えるきっかけを与えてくれるのが、日本の哲学者、九鬼周造(1888年〜1941年)です。九鬼周造は、西洋哲学を研究しつつ、日本文化について多くのことを論じた哲学者です。

そのなかでも彼の主著の一つである『「いき」の構造』は、ヨーロッパに留学して当時の最先端の哲学を学んだ九鬼周造が、日本独自の伝統的な美意識である「いき」について哲学的に論じた本であり、現在では英語にも翻訳されて世界中で読まれている名著です。

本講義では、この『「いき」の構造』をじっくり読んでいきます。

「いき」について哲学するってどういうこと?哲学書なんて難しそうで読むのをためらってしまう…そう思う方もいるかもしれません。

しかし『「いき」の構造』という本は、そんな哲学に対するイメージを覆してくれるはずです。彼がこの本の中で分析しているのは、具体的な浮世絵や「いき」とされている身振りや姿勢です。彼は、実際に「いき」であるとされている多くの具体例を持ち出しながら、「いき」を哲学的な議論へと昇華させていきます。日本独自の美意識である「いき」を西洋の美と対比しながら、鮮やかに描き出す彼の議論は、哲学的な議論のみならず、比較文化論にも通じるものがあります。

したがって九鬼の「いき」の分析は、それ自体が「おしゃれな」哲学であると同時に、日本文化論であるといえるでしょう。

いわゆる「哲学書」だからといって、難解な話題を扱っていると身構える必要はありません。

しかし、この本はもちろん立派な「哲学書」です。この本が扱っている話題は私たちの身の回りにある日常的なものかもしれませんが、実際に読んでみるとその難解さに驚いてしまうかもしれません。というのも、この本の背景には西洋哲学の伝統があり、九鬼周造は「哲学の言葉」で議論しているからです。もしかしたら、どうしてそんな難解な言葉を使わなければならないの?と思う方もいるかもしれません。

本講義では、彼の使う「哲学の言葉」をしっかりと解きほぐしながら読んでいきたいと思います。彼の議論の背景にある西洋哲学を理解しながらこの本を読むと、彼の議論の奥深さをより味わうことができるでしょう。

『「いき」の構造』を通して、哲学への扉を開けるだけでなく、「日本語で」哲学するということを考えてみませんか。私は、その手助けをします。

九鬼周造を通して、一緒に哲学の世界に飛び込みましょう!

皆様のご参加お待ちしております!

*本講義では、基本的に岩波文庫版の『「いき」の構造 他二篇』(多田道太郎解説)に所収されているものを使用しますが、講談社学術文庫版の『「いき」の構造』(藤田正勝解説)での参加も歓迎いたします。

各講義の概要

第1回講義:2024年02月16日(金):20:00 - 21:30

第1回講義では、『「いき」の構造』を読むための背景を紹介していきます。九鬼周造の生涯や、『「いき」の構造』の成立過程、そしてその背後にある西洋哲学(とりわけドイツの哲学者ハイデガー)の影響についてお話ししていきます。
こうした背景知識が頭に入っていると、この本をより面白く読むことができます。
さらに一般に古典を読むときに心がけておいた方が良いことについてお話しする予定です。

第2回講義:2024年02月23日(金):20:00 - 21:30

第2回講義では、「一 序説」と「二 「いき」の内包的構造」を扱います。
哲学書を読むうえでは、序説が一番重要かつ難解であることが多いです。そのため、九鬼周造が「何を問題にしているのか」、そして「どのように「いき」に迫っていくのか」をしっかり確認しながら、読む必要があります。また、序説から「哲学の言葉」が出てくるので、第1回講義の内容を振り返りながら、読解していきます。

「二 「いき」の内包的構造」は、『「いき」の構造』の中心的な議論になります。この箇所をしっかり理解できるかどうかで、この本が読めるかどうかが決まるといっても過言ではありません。「媚態(びたい)」、「意気地(いくじ)」、「諦め」の三つの要素が織りなす「いき」という現象を、着実に理解していきましょう。

 

第3回講義:2024年03月01日(金):20:00 - 21:30

第3回講義では、「三 「いき」の外延的構造」と「四 「いき」の自然的表現」を扱います。少し分量が多いですが、具体的な議論が多いので心配しないでください!
「三 「いき」の外延的構造」は、「いき」と関係する他の要素(「派手」や「地味」、「渋味」など)との関係から「いき」の意味を明らかにするパートです。九鬼の鮮やかな図式整理があるので、それに即して読んでいきましょう。

「四 「いき」の自然的発表」は、より具体例に即して「いき」を論じるパートです。この章では、着物の着こなしや、姿勢、仕草などが分析されます。第2回講義で扱った『「いき」の構造』の議論が、具体的にどのように表れてくるのかに注目して読んでいきます。

第4回講義:2024年03月08日(金):20:00 - 21:30

第4回は「五 「いき」の芸術的表現」を扱います。第3回で扱った「四 「いき」の自然的発表」に引き続き、「いき」の具体的な表れをみていきます。文学や、模様、色、建築など多様なジャンルが分析されます。例えば、九鬼は縦縞(ストライプ)より横縞(ボーダー)の方が「いき」だといっています。どうしてなのでしょうか?九鬼が挙げる具体例は本当に「いき」なのか、皆さんと一緒に考えていきます。

第5回講義:2024年03月15日(金):20:00 - 21:30

第5回講義は、「六 結論」を扱います。今までの回と比べて分量は少なめですが、これまでの議論がまとめられた内容が濃いパートです。最終回ですので、これまでの講義の内容をまとめつつ、あらためて『「いき」の構造』を振り返っていきましょう。そのうえで、ドイツの哲学者マルティン・ハイデガーが九鬼周造の「いき」について投げかけたある問いを、皆さんにも投げかけたいと思います。この問いは、『「いき」の構造』という本を考えるうえでも重要ですし、何より私たちが「日本語で哲学するとはどういうことなのか」ということを考えるうえでも重要な疑問です。この問いを通して、『「いき」の構造』を理解することから、より大きな哲学的問題へと踏み込んでみましょう。

講師からのメッセージ

はじめまして。岡田悠汰と申します。

現在はドイツの哲学者マルティン・ハイデガーを中心とした西洋現代哲学と、九鬼周造を中心とした日本哲学を研究しています。最近では、異文化間の哲学における対話の可能性を探究する間文化哲学や、技術哲学に関心をもって研究しています。

『「いき」の構造』という本は、私が大学生のときに読んですぐに魅了された本の一つです。この本を読んで「哲学でこんなことも語れるのか!」と感動し、哲学のイメージが激変したことを覚えています。

『「いき」の構造』の講義は、2回目になりますが、講師である私の読解も前回の講義よりもバージョンアップしています!

哲学書というのは、一度読んでわかるものではありません。しかしだからこそ、何度でも読み返す価値があるものだと思います。読み返すたびに、新しい発見があったり、逆にわからないことが増えたりを繰り返すことで、読書経験は深まっていきます。

今の時代、腰を据えて一冊の本を、しかも一見すると何を言っているのかさえもわからない本を読む時間は失われつつあるのかもしれません。ですが、わからないことに出会い、そして苦労して少しでもわかるようになるという経験は、依然としてかけがえのないものだと思います。


今回の講義では、私自身が普段しているのと同じように、「わからなさ」に出会い、自分なりにぶつかって苦労して、「少しでもわかる」という経験をサポートできたらと思っています。

皆さまのご参加、心よりお待ちしております。

参加にあたってのご案内事項
  1. 各講義は、録画のうえ参加者へ講義後半日後に共有いたしますので、一部講義にご参加が難しい場合もご参加をいただけます。
  2. 録画動画は、講義終了後もご覧いただけます。各講義の録画視聴期間は、本ページ上部に記載しています。
  3. 書籍は、参加者各自でご用意ください。
  4. 講義では、受講者の方に質問や受講者同士の対話を強要することはありません。講義中のご質問は、Zoomのチャットまたは音声で行うことができます。
  5. 参加申込期限は初回講義開講時間までとなります。
  6. 開講3日前20:00の時点で最小決行人数に達していなかった場合は、本講義を中止させていただくことがございます。その場合参加登録をされた皆様へご返金させていただきます。
  7. 開講1週間前に、参加者にはzoomとslackのURLをご共有いたします。それ以降は講義参加へのキャンセルはできませんので、ご了承願います。