終了済み講義

カント政治哲学講義

『カント政治哲学講義』

ハンナ アーレント 著

23年2月26日(日) ~ 23年3月26日(日)

毎週日曜日 20:00 - 21:30

講師写真未設定

講師: 齋藤 宜之

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視聴期限:2026年3月26日

全5回講義

参加料金:9350円

最少開講人数:10名

講義概要

この講義では、ハンナ・アーレントの講義録『カント政治哲学講義』を読み解いていきます。同書は、1970年、ニューヨークの大学、The New School for Social Researchで開講された全13回にわたる講義が、アーント没後の1982年に一書にまとめられて刊行されたものです。

カントの「政治哲学」について論じるならば、『永遠平和のために』といった著作に着目しそうなものですが、この講義でアーレントが着目しているのは、普通に読めば「美学」の書以外のなにものでもない『判断力批判』の第一部です。同書の課題は、私たちが芸術作品や自然物に対して「美しい」という感情を抱くときの心のメカニズムを解明することであり、したがって当然、「政治」という主題については一言も触れられていません。しかしアーレントは『判断力批判』第一部のなかから、「政治哲学」の原理を見事に取り出してくるのです。「美」と「政治」という一見まったく異なる事象のあいだの本質的な共通性を明らかにしていくアーレントの手並みを見届けることで、「政治とは何か」、ひいては「人間とは何か」といった問題について考えていきたいと思います。

このテキストは以下の二つの翻訳が刊行されていますが、どちらでお読みになっても問題ありません。 
・ハンナ・アーレント『完訳 カント政治哲学講義録』仲正昌樹訳、明月堂書店、2009年 
・ハンナ・アーレント『カント政治哲学の講義』浜田義文監訳、法政大学出版局、1987年

参考までに、原書は以下となります。 
Hannah Arendt, Lectures on Kant’s Political Philosophy , The University of Chicago Press, 1982.

同書には以下のテキストが収録されていますが、実際に講義内で読むのは①のみで、分量としては120ページ程度となります。 ①アーレント「カント政治哲学講義」 
②アーレント「構想力」 
③ベイナー「ハンナ・アーレントの判断論」

各講義の概要

第1回講義:2023年02月26日(日):20:00 - 21:30

アーレントが、カントの『判断力批判』を「政治哲学」の書として読解するに至る背景について解説していきます。また、『判断力批判』第一部の概略をあらかじめ紹介することで、次回からの読解のための準備とします。その他、アーレントの哲学に関する全般的な解説もする予定です。

第2回講義:2023年03月05日(日):20:00 - 21:30

「第一講義」「第二講義」「第三講義」について解説していきます。ここでは、「美」と「政治」という一見無関係な主題のあいだの結節点として、「社交性」という概念が提示されます。「美」という個人的なものと見なされる事象が、実は「他者」との関係性を不可欠としていることが明らかにされ、政治の問題へと接続されていきます。また、カントの「訪問権」という興味深い概念についても論じられています。

第3回講義:2023年03月12日(日):20:00 - 21:30

「第四講義」「第五講義」「第六講義」について解説していきます。ここでは『判断力批判』に見られるカント哲学の特徴について、プラトンの哲学や世界観と比較されながら論じられます。一言で言えば、「地上に生きる複数的な人々」を論じているのが『判断力批判』であるということが明らかにされていきます。

第4回講義:2023年03月19日(日):20:00 - 21:30

「第七講義」「第八講義」「第九講義」「第十講義」について解説していきます。ここでは『諸学部の争い』などの『判断力批判』以外の著作についても言及され、一般的意味でのカントの「政治哲学」についても論じられています。とはいえ、その場合でもあくまで根底にあるのは政治哲学の書としての『判断力批判』であり、「行為者」と「観察者」という対比を軸にしてユニークな議論が展開されます。

第5回講義:2023年03月26日(日):20:00 - 21:30

「第十一講義」「第十二講義」「第十三講義」について解説していきます。講義の終盤に至って、アーレントは『判断力批判』の緻密な解読作業に入ります。カントが美的なものにとって不可欠の能力であるとした「共通感覚」や「構想力」が、まさに政治的な判断にとっても不可欠の能力であることが明らかにされていきます。

講師からのメッセージ

はじめまして。齋藤宜之(さいとうよしゆき)と申します。イマヌエル・カントやハンナ・アーレントなどを中心に、近代・現代の哲学を研究しています。どうぞ宜しくお願いします。

「恋はするものではない、落ちるものである」という言葉がありますが、このことは「哲学」にも当てはまります。つまり人は、「さあ、今から自分は哲学をするぞ」という明確な意図をもって哲学を始めるのではなく、ある時、気が付いたらすでに哲学をしているという瞬間があるものなのです。それは例えば、子供心に「宇宙の果ての向こう側には何があるんだろう?」という疑問が心に浮かんだ瞬間であったり、追い求めていた地位や富をようやく手に入れたけれどもそれに虚しさを感じ、「人間にとって本当に大事なものは何なのだろう?」と考えた瞬間であったりします。とはいえ、そういった難題に徒手空拳で立ち向かっても、たいていの場合、勝ち目はありません。そこで古典的な哲学書の出番です。そこには、各人にとって切実な問題に立ち向かうための道具がたくさん隠されているはずです。この講義を通じて、それぞれの方にとって役に立つ道具を、一つか二つお持ち帰りいただければと思っています。それでは、講義でお会いしましょう!

参加にあたってのご案内事項
  1. 各講義は、録画のうえ参加者へ講義後半日後に共有いたしますので、一部講義にご参加が難しい場合もご参加をいただけます。
  2. 録画動画は、講義終了後もご覧いただけます。各講義の録画視聴期間は、本ページ上部に記載しています。
  3. 書籍は、参加者各自でご用意ください。
  4. 講義では、受講者の方に質問や受講者同士の対話を強要することはありません。講義中のご質問は、Zoomのチャットまたは音声で行うことができます。
  5. 参加申込期限は初回講義開講時間までとなります。
  6. 開講3日前20:00の時点で最小決行人数に達していなかった場合は、本講義を中止させていただくことがございます。その場合参加登録をされた皆様へご返金させていただきます。
  7. 開講1週間前に、参加者にはzoomとslackのURLをご共有いたします。それ以降は講義参加へのキャンセルはできませんので、ご了承願います。