終了済み講義

百人一首

『百人一首』

鈴木 日出男 著

22年5月22日(日) ~ 22年6月19日(日)

毎週日曜日 20:00 - 21:30

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講師: 藤井 嘉章

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視聴期限:2025年6月19日

全5回講義

参加料金:9000円

最少開講人数:10名

講義概要

本講座を終える頃には、和歌や短歌を自分の心と頭で読むことができるようになっていること。それを本講座では目指します。

「この和歌が読めた!」とは、さてではどのような感覚でしょうか。ど真ん中の体感としては、五七五七七で表された言葉が、心にズドンと、あるいはサラリと、ときにはカチッと、入ってきた感覚でしょう。和歌が読めた!とは、心で感じる圧倒的な体感だ、と言えます。

ではその体感を得るには、そこに近づくには、どのようないき方があるでしょうか。五七五七七を上から下に読んでいって、読み終わった瞬間に読めた!と体感する。それもひとつです。しかし、単語の意味がはっきりしない、文法が曖昧だ、語と語のつながりがいまいちつかめない、歌ことばが持つ伝統的お約束が共有できていない、などなどの場合、詩が心に響くことはないでしょう。ここを乗り越えるためには、まず和歌を頭で読む必要があります。

そこで本講座で扱う『百人一首』が心と頭で和歌を読むための、とても良い素材となります。この歌集は和歌史上、不朽の大歌人である藤原定家(ふじわら さだいえ/ていか 1162ー1241)が選んだものです。読めた時に心に広がる和歌的世界の充実は、定家が保証しています。さらに『百人一首』は万葉集の時代(8c)から、古今集(10c)、そして新古今集(13c)にわたる時代の歌が並べられており、それぞれの時代的特徴を備えた和歌を通覧することができるため、和歌を読む上でのお約束を身に付けるのにも最適です。

古文や日本文学についての前提知識は何も要りません。『百人一首』を通して、和歌を心と頭で読む体験を、1から皆様と積み上げていきたいと思います。そして、さらには和歌のどうしようもない読めなさもまた、ともに楽しめたらと思います。どんなささいなご質問にもお答えをしていきます。和歌の世界を一緒に観にいきましょう。

※『百人一首』の本文はネットを含めどこででもアクセス可能ですので、特定の書籍をご購入いただく必要はありません。もし1冊手元に置いておきたい場合は、鈴木日出男他『原色 小倉百人一首』(文英堂・2014年)、島津忠夫訳註『新版 百人一首』(角川学芸出版・1973年)、最果タヒ『百人一首という感情』(リトル・モア・2018年)など、ご自身のご関心に合うものは何かを書店で見比べてみるのも楽しいと思います。

各講義の概要

第1回講義:2022年05月22日(日):20:00 - 21:30

和歌の歴史について『百人一首』に選ばれている歌の時代順、特に『万葉集』ー『古今集』ー『新古今集』を中心にして概説します。各時代に特徴的な和歌表現の変遷を辿っていきたいと思います。

そして和歌を読むうえで必要な修辞技法(レトリック)と古文文法、和歌のお約束を大まかに確認します。これらは実際に次回以降で和歌を読んでいく際に何度も立ち返って反復をしながら、少しずつ身に付けていって頂けるような進め方をしていきます。

第2回講義:2022年05月29日(日):20:00 - 21:30

万葉時代(~8c)の歌を鑑賞していきます。この時代の歌は、上の句から下の句へとスッと読んで意味の通じるような順直な表現である、と後世からは考えられました。この時代を代表する修辞技法として主に「序詞・枕詞」の作用を理解しながら、万葉歌人たちの表現に追っていきましょう。

第3回講義:2022年06月05日(日):20:00 - 21:30

古今集時代(9c~10c)の歌を鑑賞します。和歌が定型詩として確立し、表現も万葉の順直に対して理知的であると評されます。なぜ古今集時代の歌は「理知的」と言えるのか。修辞表現としての「掛詞・縁語」を把握することを通して見ていきます。

第4回講義:2022年06月12日(日):20:00 - 21:30

古今集時代から新古今集時代への変遷(11c)を示す和歌を鑑賞します。古今集時代に確立し、もはや詠み尽くされたように思われる和歌表現の可能性を、どのように広げていくのかという難題に、歌人たちは挑戦します。伝統を踏まえた創造はいかにしてなされるのか。和歌史上の醍醐味を味わいたいと思います。

第5回講義:2022年06月19日(日):20:00 - 21:30

新古今集時代(12c~13c)の歌を鑑賞します。伝統と創造という難題に真っ向から立ち向かったのが新古今歌人でした。その中から生み出されてくる「本歌取り」という修辞技法の意味と機能を、歌人たちの時代意識とともに考えます。「良い詩」とはいかなるものか。万葉から古今集を経て、和歌史上のひとつの頂点に達する新古今集に即して、改めて考えていきます。

講師からのメッセージ

日本古典文学の分野で日本学術振興会特別研究員PDをしております、藤井嘉章と申します。

私はもともと学部時代には東京外国語大学で中国語を専攻していたのですが、大学院に入ってから江戸時代の学者で国学の大成者とされる本居宣長(もとおりのりなが 1730ー1801)の研究をはじめました。本居宣長は実証的な研究方法を日本古典文学にもたらした人物とされています。そして宣長自身その方法に行き着いたのは、契沖(けいちゅう 1640ー1701)の『百人一首改観抄(かいがんしょう)』を読んだ衝撃のためであったと述べています。そういった意味でも『百人一首』は私にとって馴染み深い古典作品の一つです。

今回のThe Five Booksでの1ヶ月の読書グループと週1回全5回の講義は、和歌を読む上で、できる限り再現可能な理解の地点にまで皆様と伴走するようなものにしたいと思います。僕のバックボーンに語学の学習があることもありまして、今回の講座も和歌という新しい言語を学んで、使いこなせるようになっていくといったイメージを持って頂ければと思います。そして、そのような再現可能な理解を超えたところにある詩の醍醐味を、皆様ご自身で掴み取って頂けるようになるための一助になれば、とても嬉しく思います。

参加にあたってのご案内事項
  1. 各講義は、録画のうえ参加者へ講義後半日後に共有いたしますので、一部講義にご参加が難しい場合もご参加をいただけます。
  2. 録画動画は、講義終了後もご覧いただけます。各講義の録画視聴期間は、本ページ上部に記載しています。
  3. 書籍は、参加者各自でご用意ください。
  4. 講義では、受講者の方に質問や受講者同士の対話を強要することはありません。講義中のご質問は、Zoomのチャットまたは音声で行うことができます。
  5. 参加申込期限は初回講義開講時間までとなります。
  6. 開講3日前20:00の時点で最小決行人数に達していなかった場合は、本講義を中止させていただくことがございます。その場合参加登録をされた皆様へご返金させていただきます。
  7. 開講1週間前に、参加者にはzoomとslackのURLをご共有いたします。それ以降は講義参加へのキャンセルはできませんので、ご了承願います。