終了済み講義

プラグマティズム

『プラグマティズム』

W.ジェイムズ 著

22年7月6日(水) ~ 22年8月3日(水)

毎週水曜日 20:00 - 21:30

大厩諒

講師: 大厩諒 (中央大学)

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視聴期限:2025年8月3日

全5回講義

参加料金:8000円

最少開講人数:10名

講義概要

この講義では、ウィリアム・ジェイムズ(1842-1910)の『プラグマティズム』を通読します。ジェイムズは、19世紀後半から20世紀初頭に活躍した米国の哲学者、心理学者で、『プラグマティズム』は彼の主著のひとつに数えられます。

彼が生きた時代の米国は大きな変化のなかにありました。たとえば、西部開拓の進展や北部と南部の対立の深まり、それによって引き起こされた南北戦争、その後の飛躍的な経済成長(「金ぴか時代」)、産業化と都市化の急加速などです。さらに、小規模のカレッジに代わって近代的な大学(university)が勃興し、専門学会や学術雑誌が登場するなど、現代の学問・研究のあり方に通じるような変化が生じていました。

こうした状況のなかで、のちに「プラグマティズム」と呼ばれることになる思想運動は生まれました。ジェイムズはその生みの親の一人であり、彼の活躍もあって、プラグマティズムは世界的に認知されるようになりました。

現代でも、プラグマティズムは、C・ミサックやR・ブランダムといった哲学者によって牽引され、大きな潮流となっています。また、人文・社会科学全体でも再び脚光を浴びており、たとえば政治哲学においては、近代政治思想の人間観を乗り越え、民主主義のバージョンア ップを図るものとして注目されています。

この講義では、そんなプラグマティズムの源流に立ち返り、ジェイムズの『プラグマティズム』を読み解いていきたいと思います。その際、主に以下の二点に注目していきます。

 1.プラグマティズムとは結局のところどのような立場なのか。  
 2.プラグマティズムは宗教とどのような関係を持つのか。

1について
プラグマティズムについては多くの人が論じてきましたし、哲学の歴史を顧みれば、多くの人が「プラグマティスト」と呼ばれてきました。しかし、そこで言われている「プラグマティズム」とは、そもそもどのような意味で使われているのでしょうか。この講義では、とかく曖昧になりがちなこの語の中心部を、源流に立ち戻ることで明らかにしたいと考えています。また、より一般的なレベルでは、プラグマティズム言えば、役に立つことなら何をしてもよいとか、実利優先のアメリカ的な(浅薄な)考えだと見なされることも多いので、そうした誤解を解くことも、同時におこなっていきます。

2について 
プラグマティズムと宗教のつながりは、とりわけ現代の議論を見ているだけではイメージしづらいところがあります。しかし、ジェイムズがこの本を書いたとき、根本的なところで、宗教の擁護という動機が働いていました。プラグマティズムは宗教とどのように結びついているのか。また、ジェイムズの支持する宗教とはどのようなものなのか。講義を通じて、この問いに明確な答えを与えたいと思います。

この講義をとおして、アメリカ哲学史の面白さと奥深さをお伝えしたいと考えています。みなさんのご参加を心よりお待ちしております。

※この講義で使用する『プラグマティズム』(桝田啓三郎訳、岩波文庫、1957年[2010年改版])は、旧版と改版で頁付けが異なります。講義では、改版の頁数で指示をおこないますので、ご注意ください。

各講義の概要

第1回講義:2022年07月06日(水):20:00 - 21:30

『プラグマティズム』を読む際の手助けとなる背景知識についてお話しします。ジェイムズの生涯および思想の特徴、プラグマティズムという思想運動の成り立ち、『プラグマティズム』という本の概略などを講義します。

第2回講義:2022年07月13日(水):20:00 - 21:30

『プラグマティズム』第1講と第2講を読みます。ジェイムズの哲学観や、哲学と「気質」の密接な関係、プラグマティズムの本来の意味などについて考えます。

第3回講義:2022年07月20日(水):20:00 - 21:30

第3講と第4講を読みます。プラグマティズムという方法を、実際の哲学的問題に適用して、その威力を体感します。

第4回講義:2022年07月27日(水):20:00 - 21:30

第5講と第6講を読みます。ここでは、真理に関するプラグマティズムの考え方(真理とは役に立つことである)が論じられます。これは、この本のなかで最も読まれ、最も議論を読んだ箇所ですが、同時に、最も誤解されやすいところでもあります。『プラグマティズム』のほかの講や、ジェイムズの哲学全体を踏まえつつ、彼の真理論を検討したいと思います。

第5回講義:2022年08月03日(水):20:00 - 21:30

第7講と第8講を読み、プラグマティズムと宗教の関係について考えます。宗教というトピックはジェイムズの哲学において最重要の位置を占めるものです。ほかの著作も参照しながら、ジェイムズの宗教論の特徴を解説し、それがプラグマティズムと密接に関係することを見ていきます。

講師からのメッセージ

はじめまして。大厩 諒(おおまや りょう)と申します。ウィリアム・ジェイムズの思想を中心に、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのアメリカ哲学の歴史を研究しています。

この時期のアメリカ哲学は、「プラグマティズムの時代」としてまとめられることもありますが、実際にはさまざまな立場が乱立した群雄割拠の状態で、プラグマティズムはそのうちのひとつにすぎませんでした。 当時活躍した哲学者たちは、いまではほとんど忘れ去られた存在ですが、そんな人たちの思想を発掘するのが私の研究のメインテーマです。

哲学は、ほかでは得られない世界の見方を私たちに与えてくれます。これは、とても楽しく、興奮する営みです。しかし、哲学の楽しさを十分に味わうには、一定の準備が必要で、それが哲学史です。講義をとおして、哲学をより楽しむために、私自身も学んでいきたいと考えています。

みなさんのご参加を心よりお待ちしております。

参加にあたってのご案内事項
  1. 各講義は、録画のうえ参加者へ講義後半日後に共有いたしますので、一部講義にご参加が難しい場合もご参加をいただけます。
  2. 録画動画は、講義終了後もご覧いただけます。各講義の録画視聴期間は、本ページ上部に記載しています。
  3. 書籍は、参加者各自でご用意ください。
  4. 講義では、受講者の方に質問や受講者同士の対話を強要することはありません。講義中のご質問は、Zoomのチャットまたは音声で行うことができます。
  5. 参加申込期限は初回講義開講時間までとなります。
  6. 開講3日前20:00の時点で最小決行人数に達していなかった場合は、本講義を中止させていただくことがございます。その場合参加登録をされた皆様へご返金させていただきます。
  7. 開講1週間前に、参加者にはzoomとslackのURLをご共有いたします。それ以降は講義参加へのキャンセルはできませんので、ご了承願います。