終了済み講義

アウトサイダーズ

『アウトサイダーズ ラベリング理論再考』

ハワード・S・ベッカー 著

22年8月13日(土) ~ 22年9月10日(土)

毎週土曜日 20:00 - 21:30

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講師: 関 駿平

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視聴期限:2025年9月10日

全5回講義

参加料金:8000円

最少開講人数:10名

講義概要

本講義で紹介するのは、社会学者ハワード・ベッカー(Howard S. Becker)による『アウトサイダーズ』です。まずは、本書をご紹介する背景について少しお話させてください。

社会には、色々な意味で「してはいけないこと」があります。それらの「してはいけないこと」には、例えば健康被害を代表とするような、倫理的な問題が理由として語られるシーンを私たちはよく目にします。

その一方で、私たちから遠い社会に目を向けてみると、「していいこと」と「してはいけないこと」を決める基準が、私たちの住む社会と異なっている場合があります。例えば、マリファナの使用可否をめぐる議論に目を向けてみましょう。ある国のある場所ではそれが容認され、日本ではそれが禁止されています。そのほか飲酒などを考えてみると、20歳を超えれば日本に暮らす私たちは当然のように飲酒できますが、一部の社会ではそれを徹底的に規制していたり、その基準が異なることがあります。

このように私たちの周りを少し見渡しても「良い/悪い」「正常/異常」などの前提が社会と社会的な諸力によって決定されていることがわかります。

本書は、アウトサイダーを決定づける社会の力に対して、大きな示唆を与える著書となります。社会問題や逸脱に関する研究は、当時から社会学で数多く行われてきましたが、本書はそれらとは少し異なった主張を展開し、その後の研究に大きな影響を与えていきます。それこそが、「社会集団はこれを犯せば逸脱となるような規則をもうけ、それを特定の人々に適用し、彼らにアウトサイダーのレッテルを貼ることによって逸脱を生みだす」という言葉に代表され、のちに「ラベリング理論」と呼ばれることとなった理論です。

本講義は、そのような「アウトサイダーズ」の肩を持つわけではありません。本書を読み進めることによって、ある一定の人々による現象や行動が「アウトサイダーズ」になること(/ならないこと)、そしてそのメカニズムを冷静に見つめる視点を提供してくれるかもしれません。今、混濁した社会のなかで、さまざまな「アウトサイダーズ」に注目が集まっています。本書を読み進めつつ、現代にも話を移しながら、諸問題について考えてみましょう。

最後に話は変わりますが、本書は参与観察による社会調査研究としても幅広く読まれています。社会学における質的調査や、フィールドワークに関心がある方も楽しく読み進められる本です。ぜひ、アウトサイダーズたちの世界を一緒に勉強させてください。

各講義の概要

第1回講義:2022年08月13日(土):20:00 - 21:30

まず、本講義を進めていく上で重要な、本書の著者であるHoward Saul Beckerの経歴と、その中で重要なシカゴ大学の研究環境を確認しましょう。この2点は本書を読み進める上で重要な前提となります。

第2回講義:2022年08月20日(土):20:00 - 21:30

第2回は、第1章/第2章を中心に取り上げます。ここでは、「社会集団はこれを犯せば逸脱となるような規則をもうけ、それを特定の人々に適用し、彼らにアウトサイダーのレッテルを貼ることによって逸脱を生みだす」という、本書の基本的なエッセンスを確認します。このような主張は当時、犯罪や社会問題に関わる社会科学の中ではなかった主張でした。当時の学問的状況と対比しながら本書の議論を確認しましょう。

第3回講義:2022年08月27日(土):20:00 - 21:30

第3回は、3章〜6章を中心にマリファナ常習者とダンス・ミュージシャンに関する事例記述を読み進めましょう。本書の核となる調査内容は、ベッカーの2つの調査によって構成されています。1つはベッカーが修士論文の執筆に際して行ったダンス・ミュージシャンの調査(5〜6章)、もう1つはベッカーが博士論文執筆後に研究所で行った、マリファナ使用者の調査(3〜4章)です。これらの調査が行われた背景と、記述された内容を共に示すことで、本書の理解を深めていきましょう。

第4回講義:2022年09月03日(土):20:00 - 21:30

第4回は、7章/8章を中心に取り上げます。ベッカーの考察はアウトサイダーズたちから、それを執行する人々へと視点が移り変わり、そのメカニズムが説明されていきます。本章を読み進めることによって、ラベリングをめぐる人々の位置関係/力関係が浮かび上がっていきます。

第5回講義:2022年09月10日(土):20:00 - 21:30

第5回は、9章/10章を中心に取り上げます。9章は本書の結論部分であり、10章は初版から数年後、ベッカーが自身の研究を振り返りながら増補として書き加えられた文章になっています。この本の後の議論や背景、ベッカーの研究などを学びながら本書を振り返りつつ、現代的問題との接続を考えてみましょう。

講師からのメッセージ

慶應義塾大学の関駿平と申します。専門は都市社会学です。これまで、シカゴ学派の都市社会学を中心に研究を行ってきました。現在は、シカゴ学派の視座に力を借りて「オーセンティック」とカテゴライズされるバーのフィールドワークを行い、都市下位文化の発展や維持について考えています。

今回私がご紹介するのは、社会のアウトサイダーたちに関する著書です。前述しましたが今、アウトサイダーと呼ばれている人々への着目が、世界各地で集まっています。今この本を読み直すことは、一定の意味があると感じています。

残念ながら私は、逸脱や社会問題に関する専門家ではありませんので、シカゴ学派としてのベッカーを強調した読み方になってしまうかもしれません。しかし、言うまでもなく、数多くの読み方があるからこそ学術書を読むことは楽しいと思います。今回は、シカゴ学派としてのベッカーを、皆さんに部分的に楽しんでいただけますと幸甚です。

私は研究者としてはまだまだ未熟者です。講義をさせていただくというよりは、私が司会や問題提起を行いつつ、意見を交換しながら皆さんと理解が深められるような、そんな時間になれば幸いです。お待ちしております。

参加にあたってのご案内事項
  1. 各講義は、録画のうえ参加者へ講義後半日後に共有いたしますので、一部講義にご参加が難しい場合もご参加をいただけます。
  2. 録画動画は、講義終了後もご覧いただけます。各講義の録画視聴期間は、本ページ上部に記載しています。
  3. 書籍は、参加者各自でご用意ください。
  4. 講義では、受講者の方に質問や受講者同士の対話を強要することはありません。講義中のご質問は、Zoomのチャットまたは音声で行うことができます。
  5. 参加申込期限は初回講義開講時間までとなります。
  6. 開講3日前20:00の時点で最小決行人数に達していなかった場合は、本講義を中止させていただくことがございます。その場合参加登録をされた皆様へご返金させていただきます。
  7. 開講1週間前に、参加者にはzoomとslackのURLをご共有いたします。それ以降は講義参加へのキャンセルはできませんので、ご了承願います。